今月の臨床 着床障害―生殖医療のブラックボックス
子宮の器質的異常と着床障害
矢田 有里
1
,
細田 容子
1
,
小森 慎二
1
1兵庫医科大学産科婦人科学教室
pp.829-833
発行日 2010年5月10日
Published Date 2010/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102382
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はじめに
卵管膨大部で受精した胚は卵管の収縮や卵管上皮の繊毛運動により子宮内へ輸送され,子宮内膜に着床する.子宮の着床過程には,子宮内膜の胚受容性の獲得,調和した着床前胚発育,胚と子宮内膜の接着,子宮内膜間質細胞における血管透過性の亢進および着床胚周囲の局在した脱落膜化,絨毛細胞の浸潤とその制御という過程がある1).それらになんらかの障害があると着床が成功しない.また,子宮内膜は月経周期に合わせて増殖期から,排卵を経て分泌期へと変化して,妊娠が成立しないと剥脱して月経を迎えるというように卵巣ホルモンにて制御されている.それに加えてサイトカイン,増殖因子,血管増生因子などのさまざまな因子が適切に発現・消失している1~4).さらに近年それらの因子の遺伝子発現にmicroRNAが関与することも明らかになってきた5).
子宮に器質的な病変があるとさまざまな過程でそれぞれの因子の発現に影響が出てくると考えられる.子宮体部は解剖学的に,外側より漿膜─筋層─内膜と大きく分かれている.特に子宮内膜は卵巣ホルモンの影響で増殖期を経て分泌期になり着床に最適な環境を提供し,胚を待つことなる.しかし,そのような状況がさまざまな因子で妨げられると着床はうまくいかず妊娠は成立しない.一般に着床障害は2/3が内膜異常であり,1/3が胚自身の異常と考えられている6).
そこで,本稿では,子宮の器質的な障害に焦点を当てて着床障害との関係についてまとめた.本稿では,子宮の器質的な障害として,子宮奇形,子宮筋腫,子宮内膜症,子宮腺筋症,子宮内膜ポリープ,アシャーマン症候群を取り上げた.そのほかについては成書を参考していただきたい.
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