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卵巣機能性腫瘤には,排卵誘発剤の使用による卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome : OHSS),あるいは,多嚢胞卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS),妊娠初期のいわゆるルテイン嚢胞や,さらに骨盤内癒着を原因とするperitoneal inclusion cyst(pseudocyst),黄体期にみられる出血性黄体嚢胞などが挙げられる.OHSSでは多数の黄体嚢胞の集合により両側性,多嚢胞性に腫大した卵巣と腹水がみられるのが特徴である.PCOSでは卵巣にネックレスサインと呼ばれる多数の小嚢胞が認められるのが特徴であるが,画像診断だけではホルモン異常のない症例も多くみられ,総合的な診断の補助的な位置づけである.ルテイン嚢胞は,漿液性嚢胞腺腫などの卵巣嚢腫合併妊娠との鑑別が問題となる.ルテイン嚢胞の場合,ほとんどが妊娠12~14週以降は縮小傾向を示すので経過観察が必要となる.Pseudocystは,開腹手術や子宮内膜症,骨盤内感染症,さらに炎症性腸疾患などによる骨盤内癒着のために生じた閉鎖腔に腹水が貯留して嚢胞状を呈するものである.出血性黄体嚢胞は,腫瘤の内容が血液であるため子宮内膜症性嚢胞との鑑別が問題となる.多くの出血性黄体嚢胞では,子宮内膜症性嚢胞に比べ腫瘤内のエコーパターンが薄く糸を引くようなパターンを呈するのが特徴で,慣れてくると両者の鑑別は比較的容易なことが多いが,ときに鑑別困難な症例も存在するので注意が必要である.また,出血性黄体嚢胞の存在は,しばしば卵巣出血の原因となっていると考えられ,注意が必要である.
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