連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール・48
広汎子宮全摘術後にドレーンからの逆行性感染が原因で外腸骨動脈の破裂を起こした症例
松川 哲
1
,
伊藤 充彰
1
,
木下 吉登
1
1大垣市民病院産婦人科
pp.1451-1453
発行日 2009年11月10日
Published Date 2009/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102221
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症 例
■患者 37歳,2経妊・2経産
■主訴 トイレ歩行時の意識消失
■既往歴・家族歴 特記事項なし
■現病歴
子宮頸癌Ib1期の術前診断で,総腸骨節下部から鼠径上節までの骨盤内リンパ節郭清を伴う広汎子宮全摘術を行った.術中に腸管損傷や血管損傷などのトラブルはなく,手術は順調に終了した.また,閉腹の際には後腹膜は開放のままとし,左下腹部から骨盤底に閉鎖式のドレーン(デイボールリリアバック®)を1本留置している.本症例の術後の病理組織診断はsquamous cell carcinoma,G2でpT1 b1N0M0のsatge Ib1であった.
術後の経過は良好であり,食事や離床も順調に進んでいた.留置したドレーンは術後3日目に抜去した.しかし,術後4日目からドレーン刺入部の皮膚に膿性滲出液の付着がみられるようになり,その頃からドレーン刺入部の痛みを訴えはじめた.術後6日目からは38℃以上の発熱がみられるようになったため,抗生剤を予防的に使用していた広域セフェム剤であるフロモキセルからより強力なセフェピムに変更した.また,術後7日目には膀胱内留置バルーンを抜去して経過観察していた.術後8日目,この日も38℃台の発熱が続いていた.午後,排尿訓練のためトイレ歩行に立った際,突然意識消失発作を起こした.
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