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はじめに
1978年,SteptoeとEdwardsら1)による世界で初めての体外受精・胚移植(in vitro fertilization-embryo transfer : IVF─ET)の成功以来,30年以上が経過した.当初,自然周期から始まった採卵はその後,採卵効率の向上を目的としてゴナドトロピン(gonadotropin : Gn)製剤など排卵誘発剤の使用による複数個採卵となり,さらに複数卵胞発育による早発LHサージ・早発排卵,採卵キャンセルを回避するためgonadotropin-releasing hormone(GnRH)アゴニストを併用する方法が確立されて,生殖補助医療(assisted reproductive technology : ART)における卵巣刺激である調節卵巣(過剰)刺激〈controlled ovarian(hyper-)stimulation : COS,(COH)〉の主流を占めてきた.近年,GnRHアンタゴニストが開発され,欧米では1994年から臨床応用されており,現在はGnRHアンタゴニストとGnの併用法も普及している.またGn製剤は遺伝子組換え技術を応用したリコンビナントFSH(recombinant follicle stimulating hormone : rFSH)製剤が開発され,1996年の市販化以降,欧米を中心に世界市場で急速に普及した.特に欧州では,狂牛病の発生による従来からの尿由来hMG/FSH製剤の製造・供給停止の影響もあり,これらに代わり現在はGn製剤の第一選択となっている.本邦においては最近までの長い間,従来通りのGnRHアゴニストと尿由来のhMG/FSH製剤の併用療法が主流であり,ART時の卵巣刺激の選択肢は少なかった.しかし2006年にGnRHアンタゴニストが承認され,rFSH製剤は2005年の承認後,2008年からは自己注射が認められ専用のペン型インジェクターも販売開始され,新しい排卵誘発法として卵巣刺激の選択肢が増えてきた.
本稿ではこれらの新しい卵巣刺激について,特にARTにおける排卵誘発の実際と現状,今後の展望について,従来からのGnRHアゴニストと尿由来hMG/FSH製剤併用療法との比較を交えながら解説する.
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