今月の臨床 性器脱診療の最前線
性器脱の診断
平松 祐司
1
,
友国 弘敬
2
1岡山大学医歯薬学総合研究科産科・婦人科学
2岡山労災病院産婦人科
pp.684-690
発行日 2009年5月10日
Published Date 2009/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102096
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はじめに
女性の平均寿命の延長により高齢女性人口が増加し,女性骨盤内臓器下垂・脱(pelvic organ prolapse : POP)の頻度が増加している.POP発生のメカニズムは本特集の他稿で解説されているが,「骨盤内臓器支持の異常」であることは間違いない.子宮体部は子宮円索,卵巣固有靱帯,卵巣提索により保持され,子宮頸部は上方では基靱帯,膀胱子宮靱帯,仙骨子宮靱帯により保持され,それを骨盤底筋群,それを連結する腱,被包する筋膜が支えている1~3)(図1,2).
DeLanceyは解剖学的支持機構を次の3つのレベルに分類した4).
Level 1 : 子宮頸部および後腟円蓋部で,この部は仙骨子宮靱帯,基靱帯の結合組織で仙骨方向に強く牽引されている.
Level 2 : 腟上部2/3および直腸部.内骨盤筋膜は恥骨頸部筋膜,直腸腟中隔に連続し,側方に伸び左右の恥骨尾骨筋(肛門挙筋)腱弓に付着しこの部を支持している.
Level 3 : 腟下部1/3,会陰体,遠位尿道部.この部は恥骨尾骨筋膜(会陰膜)で支持されている.
この骨盤底には膀胱子宮窩,直腸子宮窩,挙筋裂孔の3か所の抵抗減弱部があり,種々の原因により支持組織の弛緩,無力化が生じるとこれらの部位から臓器が脱出しPOPが発生するがその症状は多彩である1, 2).
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