今月の臨床 中高年女性のトータルヘルスケア
性器脱
性器脱の治療方針は
古山 将康
1
1田附興風会医学研究所北野病院女性骨盤外科センター
pp.896-899
発行日 2007年7月10日
Published Date 2007/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101413
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中高年女性のヘルスケアにおける性器脱治療の重要性
わが国は現在65歳以上の人口は2,682万人で,総人口(1億2,776万人)の21%が65歳以上という超高齢化社会を迎えている.高齢者の行動範囲はますます広がり,successful aging,quality of life(QOL)を維持するヘルスケアは今後さらに重要となってくる.日本人の閉経年齢は50.5歳であり,性成熟期を終えた女性は更年期,高年期,老年期と30年以上の人生が待っている.更年期障害のなかでも発汗,のぼせなどの自律神経失調症状は一定の時期を過ぎれば回復していくが,本稿のテーマである骨盤底の弛緩に伴う性器脱(pelvic organ prolapse : POP)や排尿障害などは更年期以降に発症することが多く,以後ずっと持続するため,これらの疾患のため行動範囲を制限せざるを得なくなり,QOLは著しく低下することとなる(図1).
米国の統計では,成人女性が一生の間に性器脱や尿失禁などの骨盤底の弛緩による疾病のために一度以上何らかの治療を受ける頻度は11%と推定される1).年間163億ドルが消費され,そのほとんどは尿漏れ用のパッドや大人のおむつに消費されているのが現状であり,高齢化が続く限り増大する社会的コストである2).
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