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はじめに
産科の臨床において,双胎妊娠は絨毛膜と羊膜の数から,1絨毛膜双胎と2絨毛膜双胎に分類される.このことは超音波断層法が汎用されるようになって得られた成果であり,臨床的にきわめて重要な情報を提供する.すなわち,2絨毛膜双胎の管理は早産予防が中心であるのに対し,1絨毛膜双胎ではさらに双胎間輸血症候群に対する注意を要することなどである.しかし双胎のそれぞれの児を一個体として捉えるならば,双胎児の遺伝情報の違いを知る必要があり,卵性診断が求められる.胎児形態異常の成因や取り扱いを考える際は,特に卵性診断が必要である.ただし双胎妊娠の卵性を出生前に知ることは必ずしも容易とはいえず,超音波検査による膜性診断がなお重要であることは変わりない.この際,1絨毛膜双胎はすべて一卵性双胎であるが,2絨毛膜双胎のおよそ20%もまた一卵性双胎であることを理解しておく必要がある.なぜならば,一卵性双胎はいわゆる胚性クローンであり,その表現型は通常同一であると考えられるのに対して,2絨毛膜双胎の表現型はそれぞれ異なっているからである.それでは一卵性双胎では常に両者の表現型が一致するかというと必ずしもそうではない.臨床的ないし分子遺伝学的に一卵性双胎であることが明らかであるにもかかわらず,両児に個体差(表現型の異同)を認める場合がある.無心体双胎はその典型ともいえるが,双胎間輸血症候群においても両児の大きさや後頸部の皮膚の厚み(nuchal translucency:NT)などの表現型にやはり個体差を認めることは少なくない.ここでは双胎妊娠において比較的特異的に認められる胎児形態異常を取り上げ,その成因などについて解説する.
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