今月の臨床 性感染症up to date
【性感染症への対応と治療】
2.パピローマウイルス
井上 正樹
1
1金沢大学大学院医学系研究科産婦人科学
pp.143-149
発行日 2009年2月10日
Published Date 2009/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101959
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はじめに
乳頭腫(パピローマ)は古代ローマ時代から知られておりイチジク(Fig)などと称され,艶笑話や美容上の話題になっても,医学的には注目されることはなかった.医学的な光が当てられるのは乳頭腫がウイルス感染で生じることが明らかになった20世紀初頭である.子宮癌は古くから性行為との関連が疑われ媒体となる種々の物質・細菌・ウイルスが想定され検証されてきたが,実証には至らなかった.20世紀後半の分子生物学の技術的進歩を背景として,1983年にzur Hausenらによって子宮頸部癌組織にHPV(human papillomavirus)16型genomeが高率に存在することが報告され急速に注目された1).そして,多くの研究者がHPV研究に参画し,疫学研究や分子レベルの基礎研究が進められHPVが子宮頸癌の原因ウイルスであることが明確になった2).
今日,これらHPV研究の成果は臨床現場で生かされようとしている.がん検診への導入やHPVワクチンの開発である.特に,ワクチンはHPV感染予防であるため,性交渉が低年齢化するなかで思春期からの接種がわが国を除く多くの国で実施されている.
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