今月の臨床 胎児機能不全
【胎児機能不全の原因】
3.胎盤因子
伊東 宏晃
1
1浜松医科大学附属病院周産母子センター
pp.1531-1535
発行日 2008年12月10日
Published Date 2008/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101918
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はじめに
胎児機能不全とはnon─reassuring fetal statusの邦訳である.過去に胎児仮死,胎児ジストレスと呼ばれ,さらに近年提案された胎児機能不全までの一連の概念は,胎児への酸素供給あるいは栄養供給など健全な生存と発育が障害される子宮内環境を想定している.しかしながら,現代の医学では胎児そのものの酸素飽和度,血圧,体温,尿量,栄養状態など種々のバイタルサインを直接モニタリングすることは不可能である.このような背景から,胎児機能不全とは胎児心拍数モニタリングなどあくまで子宮外から間接的な胎児well─beingの評価結果に基づく概念であり,実際の胎児の状態を必ずしも反映していない.したがって,厳密に考えれば胎児機能不全と診断される胎児の病態は十分に特定されておらず,その原因は必ずしも同定されていない.
本稿では,胎児機能不全と診断された場合の胎児状態の本態として想定されている急性あるいは慢性の低酸素症による代謝性アシドーシスをきたす機序に対して胎盤因子という視点から概説を試みる.
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