CURRENT RESEARCH
胎盤性凝固抑制因子・Calphobindinの研究
設楽 芳宏
1
,
木村 菜桜子
1
,
田中 俊誠
1
1秋田大学医学部産婦人科
pp.1307-1317
発行日 1995年9月10日
Published Date 1995/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902282
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胎盤は母体と胎児の接点であり,肺,腎,消化管,内分泌器官などの機能を有する重要な組織である.この胎盤の機能は円滑な胎盤循環によって営まれており,胎盤循環の機能低下は即座に胎児の発育,生命環境に重大な影響を及ぼす.ところが胎盤は分娩後の剥離出血予防のため止血機能としての組織トロンボプラスチンを豊富に含む組織であることが知られており,血栓好発組織と考えられている.われわれは胎児の順調な発育のためには血栓抑制物質が存在する必要があるとの仮説のもとに胎盤性凝固抑制物質の存在の解明にとりかかった.果たせるかな首尾よく胎盤の組織から血液凝固を抑制する物質を発見,精製することができたが,作用機序の解明から本物質がCa2+・リン脂質結合蛋白であることが判明し,いくつもの生理作用を有することが次第に明らかにされてきた.生命維持に不可欠な物質であるとも考えられるようになり,産婦人科という領域を越えた全生物学的研究が必要であると感じている.
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