連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール・38
妊娠中に著明な貧血を呈した症例(遺伝性球状赤血球症合併妊娠)
窪田 尚弘
1
,
杉本 公平
1
,
高田 全
1
,
青木 宏明
1
1富士市立中央病院産婦人科
pp.1478-1483
発行日 2008年11月10日
Published Date 2008/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101907
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症 例
患 者 : 42歳,0経妊・0経産
既往歴 : 胆石,肝・脾臓腫大(他院にて経過観察中)
現病歴 : 妊娠9週時の検査では,Hb 9.4 g/dlと軽度貧血を認める以外に異常所見はなく,妊娠16週までは妊娠経過に異常を認めなかった.しかし,妊娠18週頃より全身倦怠感を認め,妊娠20週1日の妊婦健診時に易疲労感,食欲低下,37℃台の微熱を訴え,同時に施行した末梢血液検査ではHb 6.3 g/dlと貧血を認め,鉄剤の投与にて経過を観察した.20週6日,全身倦怠感が著明となり,Hb 4.5 g/dlと貧血は悪化した.胎児の発育など妊娠経過は特に異常所見を認めなかった.この時点で,母親が以前に溶血性貧血にて脾臓摘出を受けたことが判明し,家族性の溶血性貧血の可能性を考え,当院内科と相談し今後の治療を行った.
検査所見 : LDH 354 IU/l,T─BIL 0.8 mg/dl,Fe 243 μg/dl,CRP 0.96 mg/dl,TSH 1.226 μIU/ml,F─T3 2.41 pg/ml,F─T4 1.09 ng/dl,WBC 9,700/μl,RBC 1.35×106/μl,Hb 4.5 g/dl,Hct 12.5%,MCV 92.7fl,MCHC 35.9%,網状赤血球4.04%,直接・間接クームスともに陰性,ハプトグロビン31 mg/dlであった.
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