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当院のある但馬(たじま)は兵庫県北部にあり,全国の黒毛和牛のルーツである但馬牛(別名神戸牛)で有名ですが,「限界集落」が増加しており,構成町村の高齢化率が軒並み30%を超えるようになっています.当院は南但馬山間部の養父市八鹿町にあって,急性期からリハビリ・慢性期病床および緩和ケア病床まで備えた19科・420床,職員総数600名の総合病院ですが,常勤医師数は41名と減少の一途をたどっています.一方,但馬全域の分娩数は約30%の帰省分娩を含む年間1,500件ありますが,分娩担当施設は3つの公立病院に限られ,分娩担当医師数は8名と少数です.
当院の産科医師数も平成20年5月までは3名でしたが,現在は2名(平均年齢51歳)で,2名の小児科医と12名の助産師で「周産期センター」を構成し(写真),年間約360件の分娩を担当しています.兵庫県は母体搬送・新生児搬送システムが構築されているとはいえ,基幹病院の受け入れが限界に達しており,NICUを持たない当院でもかなりのハイリスク症例をお世話せざるを得ないのが現状です.さらに,前記3施設ともに医師の高齢化が進み,あと数年もすればさらに分娩担当医師の減少が避けられない事態が予想されるため,3病院相互の連携をはかるとともに,当院では「院内助産所」を周産期センター内に設けるべく準備中です.筆者は昭和58年3月から当院に赴任し,当初から胎児心拍モニタリングを導入した妊産婦管理を行い,結果として地域管轄保健所管内の脳性麻痺児発生率低下(2/出生1,000から0.3/出生1,000)を報告しましたが(日産婦誌42巻,1990年),今後もこの成績を維持できるようにリスク評価を適正に行う必要があります.なお当科では,15年前から看護師,助産師,小児科医および産科医師合同の産科カンファレンスを毎月行って,分娩終了例の反省と分娩予定例のリスク評価を行っており,全国平均より低い周産期死亡率を維持しています.
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