今月の臨床 臨床遺伝学─診療に必要な最新情報
遺伝カウンセリングの実際
1.不妊
竹下 直樹
1
1東邦大学医学部産科婦人科学講座
pp.1144-1149
発行日 2007年9月10日
Published Date 2007/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101565
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はじめに
カップルにとって,妊娠・出産は非常に当然のことと考えられ,当然自然に子を授かるものと思っている.そのため避妊期間を持たず,1年,2年と経過し妊娠に至らない場合は「なぜ妊娠しないのだろう?」,「お互い身体的に病気なのだろうか?」といった不安が生じてくる.現に,結婚後1年で妊娠に至るのは約80%といわれており,多くのカップルが2年の間で出産に至っている.また,妊娠は成立するが,残念にも稽留流産あるいは児心拍が確認できたにもかかわらず,その後発育しない,不育状態となる場合もある.こういったカップルにとって,「妊娠」という言葉は大きな葛藤の原因となり,周囲からのプレッシャーなども加わり,抑うつ的気分に代表されるように,ときに精神状態が不安定になることもある.
不妊カウンセリングとは,単に妊娠に至るまでの相談ではなく,生殖生理のメカニズム,生殖遺伝学の知識,そして心理的支援,カウンセリングを含めた「生殖心理カウンセリング」のなかの1つとして欧米では位置づけられている.したがって,そこに携わるものは当然医師のみでは不十分であり,非医師遺伝カウンセラー,心理士,助産師,看護師などのチーム体制を整備し対応することが必要である.
ここでは,実際のカウンセリング場面で,しばしば遭遇する具体的な問題と,また,外来診療をするに当たり情報提供が望ましい最近のトピックスについて解説する.
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