今月の臨床 産婦人科外来ベストナビゲーション
ここが聞きたい105例の対処と処方
V 腫瘍
【癌治療の副作用】97.抗癌剤治療後に末梢神経障害を起こした患者です.
倉垣 千恵
1
,
榎本 隆之
1
1大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学産科婦人科
pp.631-633
発行日 2007年4月10日
Published Date 2007/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101530
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1 診療の概説
神経障害は,化学療法によりしばしば起こりうる副作用の1つであり,中枢神経および末梢神経の双方に対する障害が報告されている.特に末梢神経障害については,ビンカアルカロイドのビンクリスチン,シスプラチンに代表されるプラチナ製剤,そしてパクリタキセルをはじめとするタキサン系抗癌剤において生じやすいことがよく知られており,ときに化学療法の用量規定因子となる 1).これらの薬剤は卵巣癌,乳癌,血液腫瘍などに対して,幅広く抗腫瘍効果を示す薬剤として用いられており,なかでも近年の婦人科悪性腫瘍に対する化学療法に関しては,タキサン系のパクリタキセルおよびプラチナ製剤であるカルボプラチンとの併用療法が卵巣癌に対する標準的治療とされているため,タキサン系薬剤およびプラチナ製剤が用いられる頻度が増している.これらの薬剤の適応が広がり,その有効性のため使用される症例数が増加するにつれて,副作用としての末梢神経障害が高率に発生することが報告されるようになっている 2, 3).
まず,従来から報告されているシスプラチンにおける末梢神経障害は,用量蓄積性のために400 mg/m2を越える場合に知覚性障害としてしばしば認められる 4).これらの末梢神経障害の多くは治療終了後に出現し,一方,通常運動神経への障害はみられない.神経障害を生じる詳細な機序については不明であるが,神経の軸索変性によるものと考えられている 1).また,プラチナ製剤であるカルボプラチンは,高用量での神経障害の可能性はあるものの,シスプラチンと比較して神経障害性は低いとされる 1).
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