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1 診療の概説
放射線治療の副作用としてみられる早期障害と晩発障害のうち,イレウス症状は主に治療後6か月以上経過した後の晩発障害として現れることが多い 1, 2).この放射線障害としてみられる腸管狭窄,イレウス,腸管穿孔,出血などの発症機序としては,主に放射線による腸管組織の線維化および血行障害が考えられている 2).放射線の照射加療期間中に下部消化管にみられる症状は,腸管閉塞よりもむしろ下痢症状であり,通常治療後に回復するが,晩期障害として治療後も長期にわたり認められることがある 3).一方,主に腸管狭窄など,イレウスに関連する消化管障害は主に晩期障害として出現する.これらの発生頻度は5%前後といわれ 3, 4),治療後数か月から数年の長期間にわたり症状が出現する可能性があり 2),特に小腸における障害では重篤となる 5).下部消化管における腸管狭窄,炎症,穿孔などの障害のうち,75%の症例は治療後30か月以内に発症していることが放射線治療を受けた子宮頸癌患者において報告されている 5).
イレウスはいずれの時期に発症したものであれ,一般のイレウスと同様に,機械的イレウスか機能的イレウスかの鑑別が治療選択上必要となる.婦人科手術後の照射症例では,開腹術による癒着の影響から機械的イレウスのリスクがあることを念頭に置かなければならない 2, 6).さらに,術後照射の開始時には,術創治癒ならびに骨盤内臓器の機能の回復状態を十分に評価する必要がある.一方,開腹術の既往がない症例でも,照射線量が60 Gyを超えるとそれ以下の照射線量の場合と比較して消化管障害のリスクが増すことが報告されている 7).このため,治療に要する照射線量が増加した場合にも消化管への障害をより軽減することが求められており,近年,照射範囲を病変部位のみにより限定して消化管が受ける照射量を減じる照射方法が報告されている 8, 9).婦人科腫瘍の放射線治療においては,消化管障害が生じる危険部位は小腸以下広範囲にわたるため,腸管の狭窄,閉塞,穿孔などが疑われる場合,消化管の障害部位の検索には注意を要す.
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