今月の臨床 産婦人科外来ベストナビゲーション
ここが聞きたい105例の対処と処方
II 内分泌
【無月経】25.将来の妊孕性を心配している体重減少性無月経の患者です.
山口 昌俊
1
1宮崎大学医学部産婦人科
pp.415-417
発行日 2007年4月10日
Published Date 2007/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101455
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1 診療の概説
思春期に月経が発来する際に,一定量の脂肪組織の沈着が必須であることはよく知られた事実である.たとえば,初経発来時の体脂肪率は少なくとも17%は必要であるし,月経周期を維持するためには22%以上の体脂肪量が必要であるといわれる 1, 2).最近は,脂肪組織が種々のホルモンやサイトカインを産生していることが知られるようになり,内分泌臓器の1つであるという考え方もある.つまり,月経周期の維持に脂肪組織は必須であり,極端な体重減少による脂肪組織の減少は無月経を引き起こす.最近スリムな体型がもてはやされるようになり,ダイエット情報がマスコミに氾濫するようになったため,若い女性が意識的に体重を減少させようと努力し,その結果として続発性無月経となり婦人科を受診することが稀ではなくなってきている.たとえば,宮川ら 3)は思春期女性の無月経の43%は体重減少がその原因であったと報告している(図1).体重減少の原因にはさまざまなものがあるが,ダイエットなど摂取カロリーを制限したために体脂肪量が減少したものと,アスリートなどのように消費カロリーが摂取カロリーを上回っているために体脂肪量が減少したものが多いといわれる.体脂肪量の減少は血中エストロゲンの低下を引き起こし,月経が停止するのみでなく,生殖器の萎縮や骨塩量の低下を引き起こすことがある.
診断に関しては,次の設問で述べる神経性食思不振症との鑑別が必要であるが(表1),やせの自覚があるか,異常行動がみられるかなど,いくつかの観点で鑑別は可能である.
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