連載 産婦人科エコー 何を考えるか?・7
胎児肝内の嚢胞像─肝嚢胞と臍静脈の静脈瘤
竹内 久彌
1
1愛和病院画像診断部
pp.1041-1044
発行日 2006年8月10日
Published Date 2006/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100762
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妊娠32週の定期健診の際に胎児発育度チェックの目的で行われた超音波検査で,肝内に径1×1.5×1.7cmの嚢胞像(矢印)が発見された.それほど大きな嚢胞ではなく,発生部位が肝内でも横隔膜ドームに近い辺縁にあって腹部計測断面をかなりはずれた位置であったため,それまで2週間隔で行われてきた定期健診の際の超音波検査では発見されることがなかったものと考えられる.
肝内外には明らかな嚢胞構造が普通に観察されるため,それまで描出されていても不審を持たれなかった可能性もある.肝に関係した嚢胞構造としては,肝に接する肝外には胃胞,拡張腎盂,腸管などがあるが,その形態と位置を正しく把握できれば読影にそれほど困難はないはずである.肝内にあらわれる嚢胞像のうち,血管像としては臍静脈・門脈系と肝静脈が描出されるはずであり,特に臍静脈はかなりの太さを持つため断面の取り方によっては嚢胞と読影されることも起こり得る.本例では嚢胞像が孤立性であることから形態的にも血管構造は否定できたが,パワードプラにより嚢胞内に血流が描出されないことを示したのが本図である.もう1つの肝内嚢胞は胆嚢であるが,その描出位置と特徴的な形態から,これも読影に困難はない.本例はそれらのいずれでもない単純性嚢胞であることから肝嚢胞(liver cyst)を考えることができた.
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