- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
わが国での喫煙率について,男性では低下傾向にある一方で女性,特に若い女性では若干増加傾向にあるという統計が出されました.確かに駅や公共施設の喫煙コーナーでも女性の姿をよく見かけます.喫煙が医療費にも多大の影響を与えていることは明らかですので,厚生労働省が喫煙率低下のための数値目標を設定しようとしたところ,JTからの猛反発により断念したという新聞記事もありました.個人の嗜好に国が目標値を定めてまで干渉するべきではないということらしいのですが,諸外国に比べた行政としての対応の遅れは否めません.公共施設では全面禁煙に踏み切るところが増えてきており,大阪では内科医でもある関市長が御堂筋での路上喫煙禁止条令を検討しているようです.関西医科大学附属枚方病院では,昨年1月の開院を契機に,全面禁煙(従来の施設内禁煙から敷地内禁煙へ)に踏み切りました.建物内はもちろん,駐車場を含む病院敷地全域を禁煙ゾーンとし,喫煙不可を了解した患者さんしか入院できない旨を入院案内にも明記しました.しかし健康科学センターにおける積極的な禁煙指導にもかかわらず,「声の箱」への投書には,院内喫煙コーナー設置への強い要望がコンスタントに出されています.開院後1年を経た最近のタバコ吸殻数のデータをみると,建物内では多くても日に数本の吸殻が,それも外来入り口近くのゴミ箱で見つかるだけになっています.しかし外部敷地内では依然として日に50~70本の吸殻が,入り口近くのゴミ箱を中心に回収されています.建物からかなり離れた各所にも禁煙マークを立てていますので,喫煙しながら病院に近づいて,建物に入る直前に消して吸殻をゴミ箱に捨てるというパターンが多いようです.安全のためにはゴミ箱のかわりに灰皿を置いたほうが良いのですが,そうするとそこが喫煙コーナーになってしまいます.昨年11月のアンケート調査結果を見ると,職員の喫煙率は,医師19.1%,看護師15.7%,医療技術職20.3%,事務職27.5%,業務委託18.5%となっています.最も人数が多い看護師の喫煙率は一般女性での12%より高く,また喫煙看護師ではその74%が20本/日以上のヘビースモーカーで,他職種の16~35%に比べて突出した値です.しかし職種にかかわらず,喫煙者の半数は禁煙する意思があると回答していますので,今後も職員向けの禁煙講演会は定期的に開催していく予定です.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.