今月の臨床 ピル─エビデンスに基づいて新ガイドラインを読み解く
ピルの副作用と新ガイドライン
1.血栓症 2)ピルの種類と血栓症のリスク―第3世代のピルはより危険なのか
大久保 智治
1
,
本庄 英雄
1
1京都府立医科大学大学院女性生涯医科学
pp.1454-1457
発行日 2006年12月10日
Published Date 2006/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101324
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はじめに
ピルは健康な女性が長期間服用することから,副作用として含有するエストロゲンとプロゲストーゲンに起因する4つの心血管疾患,すなわち静脈血栓塞栓症,心筋梗塞などの虚血性心疾患,脳卒中などの脳血管障害,高血圧症などが問題とされ,その対策としてエストロゲン含有量の低用量化,新規プロゲストーゲンの開発や投薬法の工夫が進められてきた.1970年代にはエストロゲンの用量を50 mg未満とした第二世代(低用量ピル)が開発され,プロゲストーゲンも月経周期のパターンに近い二相性および三相性投与法が行われるようになった.ついで1980年代半ばには,男性ホルモン作用の少ないプロゲストーゲン(デソゲストレル,ゲストデン,ノルゲスチメート)を用い,きわめてホルモン含有量の少ない一相性ピルが第三世代として登場している.日本でもようやく低用量ピルが認可されたが,副作用としての心血管疾患発症の危険率は,加齢および喫煙量の増加と平行して高まることが明らかになっており,35歳以上でヘビースモーカーの女性ではピルの服用を回避すべきとされている.
本稿では,ピルによる心血管疾患発症,特に血栓症に関し,その機序,さらに世代間における血栓症に対するリスクの相違と最近の知見を述べたい.
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