- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
はじめに
現在の生殖医療では,体外受精(IVF)をはじめ顕微授精(ここでは卵細胞質内精子注入法:ICSIとする)の実施により,治療可能域が拡大し,多くのカップルがその恩恵にあずかっているところである.しかし,これらのARTはすべてのカップルに有効なのではなく,カップルによってはIVFやICSIの反復不成功例,卵子の質がいつも不良である例などに遭遇することが多々ある.反復不成功もその原因を掘り下げると,原因の1つとして卵子のクオリティ不良が存在する可能性がある.さらに,その原因については同定された確かなものがないのが現状であるが,要因の1つとして女性の加齢に伴う卵子のクオリティの低下がある.このような卵子のクオリティの低下は依然として生殖医療の大きな障壁となっており,IVFやICSIをもってしても克服できない障壁となっている.
卵子のクオリティ低下の一要因である女性の年齢の高齢化については,もちろんその妊孕能低下の1つの大きな原因として,卵巣のなかの卵子数が減少することもあるが,遺伝的に正常な卵子がより少なくなっているからでもある.卵巣中の卵子数がピークとなるのは妊娠4~5か月時で600万~700万個といわれる.その数は出生時には100万~200万個となり,思春期では30万~50万個,30歳後半で卵子数が約25,000個となるころから卵子の消失傾向が強くなる.異常染色体を持つ卵子も加齢とともに増加するので,正常卵子の割合は急激に減少する.加齢とともに増加する卵子の障害は染色体異常だけではなく,実験動物の卵子では表1のような異常が確認され,いわゆる卵子のクオリティ低下が認められている.もちろん,加齢によらない原因からも表1のような異常が起こる.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.