今月の臨床 不妊治療の難題を解く―最新のエビデンスを考慮した解説
EBMからみたART
5.未熟卵子の体外成熟法は?
福田 愛作
1
,
森本 義晴
1
1IVF大阪クリニック
pp.1414-1419
発行日 2003年11月10日
Published Date 2003/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100793
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はじめに
未熟卵子を体外成熟させた後に体外受精を行い受精卵を子宮内に移植するという未熟卵体外受精胚移植法(IVM―IVF : in vitro maturation, in vitro fertilization and embryo transfer)をevidenceに基づいて解説するのが本稿の主旨である.そもそも1978年の体外受精胚移植法(IVF)の世界初の成功以前にEdwardsは幾度となく摘出卵巣から回収された未熟卵を体外成熟させ,できた成熟卵に体外受精を行い胚培養実験に成功している1).当初はこの方法がヒト体外受精成功への道と考えられていた.しかし実際の不妊治療臨床では,体内にある卵巣から未熟卵を採取すること,すなわち直径数ミリの卵胞を穿刺することは腹腔鏡下採卵の時代には至難の技であった.ところが経腟超音波下採卵が開発され,小卵胞からの未熟卵の採取も技術的に可能となった.
臨床応用としての未熟卵の体外培養(IVM)は比較的近年に開発された技術で,卵核胞期卵(GV)を体外で最終成熟段階である第2減数分裂中期(M II)にまで成熟させる培養技術である.IVMの技術を進歩させることによりさまざまな利点が考えられる.短期的には多嚢胞精卵巣症候群(PCOS)の患者に卵巣過剰症候群(OHSS)発症のリスクを負わせることなく体外受精を行うことが可能であるし,長期的には早発閉経の問題解決や卵巣組織bankからの卵子の臨床応用も可能となろう.またヒト卵子の成熟過程に関する基礎研究にも貢献するのは間違いない.
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