今月の臨床 不妊治療の難題を解く―最新のエビデンスを考慮した解説
EBMからみたART
4.凍結胚移植周期の管理は?
菅沼 信彦
1
,
榊原 重久
1
,
鈴木 範子
1
,
若原 靖典
1
1豊橋市民病院不妊センター
pp.1410-1413
発行日 2003年11月10日
Published Date 2003/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100792
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はじめに
排卵誘発剤,gonadotropin releasing hormone(GnRH)アナログ,さらに経腟超音波断層撮影装置を用いた採卵法などの技術的進歩に伴い,体外受精―胚移植(in vitro fertilization and embryo transfer : IVF―ET)時の過排卵刺激による1回の採卵において,多数の良好胚が得られるようになった.しかしながら移植胚数の増加は妊娠率の向上とともに,多胎妊娠の頻度の増加をもたらした.母児の予後が多胎妊娠で不良なことはよく知られており,日本産科婦人科学会は移植胚を原則3個以内に制限するよう会告を出している.移植胚数の制限により生じた余剰胚は,凍結胚―融解移植の応用により,採卵周期以降での移植が可能になることから,多胎率を増加させず妊娠率を向上させることができる.さらに採卵に伴う患者の身体的・精神的・経済的負担の軽減,卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome : OHSS)発生の回避の観点からも,現在,余剰胚の凍結保存,それに続く融解胚移植はIVF―ETの臨床上,必要不可欠なものとなっている.
1983年,ヒトの胚の凍結胚―融解移植による妊娠・出産が報告されたが,それ以来凍結保存の技術は進歩とともに,融解周期の管理法に関しても種々の知見が得られてきている1).本稿では,現在当院が行っている融解胚移植周期の実際を中心に紹介し,その臨床成績について概説する.
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