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はじめに
未熟卵の体外成熟がART(assisted reproductive technology)に急速に取り入れられてきている.この新しい技術はさらに改善する余地もあるが,最近のデータでは従来から行われている体外受精IVF(in vitro fertilization)とほぼ同様な有用性と安全性が示されていると報告される1).さらに,IVMはいくつかのメリットを有し,例えばHMG製剤やGnRHアナログを必ずしも必要とせず経費を軽減することができる.さらに卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発現を回避することができ,プロトコールが簡便であることなどが挙げられる.
生殖医療は1978年,英国のSteptoe&Edwardsらの世界初体外受精(IVF─ET)の成功により卵管性の不妊症に幸福を呼び,さらにPalermoらの顕微授精(ICSI)の成功により男性不妊症に福音を与え,格段の進歩を遂げ発展してきた感がある.そのなかで経腟超音波,GnRHアゴニストやアンタゴニストの開発により,成熟卵の採取が可能となり,さらに胚盤胞移植や凍結技術の進歩などさまざまな生殖補助医療が開発されてきた.
IVM─IVF(in vitro maturation─in vitro fertilization)は未熟卵を採取し,体外で成熟させ,その後は通常のIVFと同様である.主に多嚢胞性卵巣(poly cystic ovary : PCO)や反復不成功の患者にHMG製剤を使用せず,あるいは少量のFSH製剤だけで未熟卵を採取し,体外で成熟させ,成熟した卵を体外受精あるいは顕微授精させ,分割卵を子宮に移植する方法である.当初は採卵手技の困難さおよび妊娠率が低く,なかなか普及していないのが現状であった.最近さまざまな工夫により手技の簡便さ,技術の進歩,培養液の開発など妊娠率の向上が認められ,通常のIVFの代わりになる可能性もあると推察される.今回はわれわれの施設での改良点や手技などを記載し,どの施設でもARTの選択肢の1つとして,気軽に挑戦可能な方法をできるだけ簡便にわかりやすく述べていきたい.
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