今月の臨床 性差医療
循環器疾患と性差
2. 心疾患と性差
河野 宏明
1
1熊本大学大学院医学薬学研究部循環器病態学
pp.853-861
発行日 2006年6月10日
Published Date 2006/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100725
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はじめに
虚血性心疾患は,欧米では女性の死因の第1位である.女性の虚血性心疾患は閉経後に増加する.このことは,内因性女性ホルモンが動脈硬化進展を抑制していると考えられる.また,女性の心筋梗塞は男性に比較して重症になりやすいこともよく知られており,近年,女性の危険因子とその管理が注目されている.われわれの検討では,急性心筋梗塞に対する危険因子には男女差が存在する.男性は高血圧,喫煙,糖尿病の順であるが,女性では順位が異なり喫煙が1位,続いて糖尿病,高血圧の順である.閉経前女性といえども,将来の動脈硬化性疾患の発症を減少させるために,生活習慣の管理に留意すべきである.妊婦に対しても,妊娠中の厳重な体重管理と禁煙を強く奨励する.さらに,分娩後も喫煙が再発しないように強く奨励しなければならない.
一方,男性は女性と異なり加齢とともに虚血性心疾患が増加する.デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は副腎由来のステロイドホルモンであり,20歳ごろをピークにして加齢とともに減少する.DHEAの作用についてはいまだ明らかではない.われわれは,心疾患罹患患者は同年齢の健常者に比較してDHEAが低下していること,初老期男性に対するDHEA補充療法にはインスリン感受性改善効果があることを明らかにした.このことは,DHEAには動脈硬化進展抑制作用がある可能性を示唆したものである.もちろん,大規模研究が必要ではあるが,DHEA補充療法が男性の将来の虚血性心疾患発症を減少させる可能性があると考えられる.
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