今月の臨床 性差医療
循環器疾患と性差
3. 高脂血症と性差
若槻 明彦
1
1愛知医科大学産婦人科
pp.862-865
発行日 2006年6月10日
Published Date 2006/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100726
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はじめに
心血管系疾患(cardiovascular disease : CVD)の発症リスクは年齢とともに増加するが,その程度は男女間でかなり差がある.CVDにはいくつかの危険因子があるが,高脂血症の存在はなかでも重大な一因である.この理由として,悪玉のlow─density lipoprotein(LDL)が血中に蓄積すると血管壁内に侵入し,活性酸素に酸化変性される.酸化LDLはマクロファージに一方的に貪食され最終的に泡沫細胞を形成し,最終的に粥状硬化へと進展するからである.実際に総コレステロール(TC)が増加すると冠動脈疾患の発症リスクや死亡率が上昇することが疫学試験で証明されている1).一方,中性脂肪(TG)の増加はLDLを超悪玉の小型の粒子に変化させることが知られている.
高脂血症の年齢別頻度やパターンも男女間で大きな差異を認め,閉経後は男性に比較し女性が高率になる.しかし疫学報告により,女性の高脂血症は男性の場合とは異なりCVDリスクにならないことが示されたため,女性の高脂血症は治療する必要がないとの意見も多く,一致した見解はなかった.昨年末に抗脂血症剤の治療効果に関する報告が行われ,女性の高脂血症は治療するか否かについて明らかになりつつある.
本稿では男女間におけるCVDリスクおよび高脂血症頻度の違い,閉経後高脂血症の発症機序や治療の是非について概説する.
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