特集 改めて病院の安全管理を問う
医療事故訴訟の判決からみた医療事故の傾向
竹中 郁夫
1
1もなみ法律事務所
pp.112-116
発行日 2001年2月1日
Published Date 2001/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541903193
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医療にまつわる好ましからざるできごとの存在構造
連日のように医療事故の報道がマスコミの紙面をにぎわせている.本稿では,初めに医療にまつわる好ましからざるできごと(これを本稿では,「問題医療行為」と呼ぶ)のあり方について説明しておきたい.
問題医療行為に対して使われる言葉は,医療事故,医療過誤,医療紛争である.これらには,はっきりとした定義はなく,かなり情緒的に使われている.患者側は,医療事故,医療過誤という言葉を好んで使おうとし,医療側は医療紛争という言葉を好んで使おうとする.同じ事象を表現するにしても,当事者の立場性が反映し,大きくスプリットしている現実がある.医療事故は過失ある医療行為を示唆し,医療過誤は過失ある医療行為そのものを表現するゆえに患者側の糾問的文脈に適合的であり,医療紛争はいまだそのような有責・無責の判断を経ておらず,価値中立的であるゆえ医療者の防衛に適合的と考えられているのかもしれない.
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