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1 はじめに
子宮頸管妊娠(以下,頸管妊娠と略)は,米国では2,400~50,000妊娠に1例1),子宮外妊娠の1%未満2)とされており,本邦ではShinagawaら3)は1,000妊娠に1例,子宮外妊娠の9%,中野ら4)は9,614分娩に対して10例(0.10%),子宮外妊娠の3.66%と報告しており,稀な疾患である.また,帝王切開(以下,帝切と略)創部妊娠はさらに稀な疾患であり,われわれの検索では2003年12月末日までで本邦7例5~12),国外28例13~37)の計35例で,自験例での頻度は分娩数に対して0.027%(1/3,679例),帝切数に対して0.19%(1/527例),子宮外妊娠中の帝切創部妊娠の頻度は4.5%(1/22例)であった.
頸管妊娠と帝切創部妊娠は着床部位が解剖学的に近いため,画像診断上で両者の鑑別が問題となる場合がある.また,進行流産や,妊娠反応が陽性で子宮腔内に胎嚢が確認されない場合にはナボット卵や頸管内のポリープ(嚢胞状)との鑑別もときに問題となる可能性がある.頸管妊娠の診断において,子宮内掻爬既往,アッシャーマン症候群,帝切既往,子宮筋腫,体外受精・胚移植との関連性が示唆されている1)ことは臨床的に参考となる.特に子宮内掻爬既往は70%以上に認められるとの報告38)がある.自験例も稽留流産による子宮内清掃術の既往が1回あった.病因は明確ではないものの,子宮内掻爬既往は頸管妊娠のリスクファクターとして認識し,早期診断に心掛ける必要がある.臨床症状としては無痛性の性器出血と頸管の開大所見,内診での頸管の腫大によるダルマ状所見が挙げられている.なかでも無痛性の出血は90%に認められるとの報告39)がある.
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