今月の臨床 異所性妊娠
診断と治療の実際
7.帝王切開創部妊娠を除く,子宮筋層内妊娠
小畑 聡一朗
1
,
茂田 博行
1
1横浜市立市民病院産婦人科
pp.1126-1129
発行日 2010年7月10日
Published Date 2010/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102432
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はじめに
異所性妊娠において子宮筋層内妊娠の頻度は低く,非常に稀な疾患である.異所性妊娠の頻度は卵管膨大部で最も高く(80%),卵管峡部(14%),間質部(3.0%),卵巣(1.5%)と続き,子宮筋層内妊娠の頻度は1%にも満たない1).
子宮筋層内妊娠の成立の経路としては,(1)間質部からの侵入,(2)子宮の漿膜側からの侵入,(3)子宮の内膜側からの侵入の3通りが提唱されており2, 3),そのなかでも子宮内膜側からの侵入を唱える報告が最も多くみられる.また子宮筋層内妊娠の原因としては帝王切開術,子宮筋腫核出術,子宮内容除去術など,子宮筋層に医原的な侵襲を伴う操作が関係している可能性が指摘されている.そのなかでも帝王切開瘢痕部妊娠が報告例の多くを占めるが4),帝王切開術の既往のない子宮筋層内妊娠の報告例も散見される.最近では,その原因として上記に挙げた以外にIVF─ETの関与も指摘されており,実際その妊娠例の増加に伴い,IVF─ET妊娠のフォロー中に,同疾患を指摘される例も報告されている5).
子宮筋層内妊娠においても,ほかの部位の子宮外妊娠と同様に,妊娠部位の破裂による出血性ショックを起こすなど,重篤な経過をたどる可能性が考えられるため,早期発見,治療が望まれる.本稿では帝王切開術の既往がない子宮筋層内妊娠の自験例を提示するとともに,子宮筋層内妊娠について考察する.
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