連載 症例
腸結核を併発した産褥期結核の1症例
松本 安代
1,4
,
紙森 隆雄
2
,
藤原 仁史
3
,
横田 光
4
,
藤川 晃成
2
,
向井 秀一
3
,
川端 眞人
1
,
椋棒 正昌
4
1神戸大学医学部医学研究国際交流センター国際保健学教室
2淀川キリスト教病院呼吸器内科
3淀川キリスト教病院消化器科
4淀川キリスト教病院産婦人科
pp.965-967
発行日 2004年7月10日
Published Date 2004/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100573
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近年,結核の再興は問題となっている.1999年に「結核緊急事態宣言」が出されたのち罹患率は低下したものの,まだ毎月全国で300人を超える20~30代の新規結核患者の登録がある.妊産婦結核の頻度は高くはないが,診断・治療が遅れたり,妊娠中もしくは授乳中であるため,患者の受診自体も遅れやすい.今回われわれは,腸結核を伴う産褥期肺結核症例を経験した.妊産婦において咳嗽,不明熱の症状があれば結核も念頭において診療することが必要である.
はじめに
結核は,世界的にみて単一病原体による感染症としてはHIV/AIDSに次いで死因第2位であり,年間約200万人が死亡し,2000年においては800~900万人の新規患者が推定されている1).成人の新規結核患者の9%がHIV陽性であることから,二次感染としての結核の再興,また途上国における貧困と人口過密による結核の流行,そして薬剤耐性結核の増加は非常に注目されている2).日本における結核は,1997年より3年連続して罹患率の上昇を認め,1999年には人口10万人対34.6となり「結核緊急事態宣言」が厚生省より出された.以後,罹患率は低下したものの,毎月全国で2,000人を超える新規患者登録があり,20~30代がその17%を占める2).特に妊娠・産褥期は妊娠中もしくは授乳中であるため,受診の遅れ(patient's delay),診断・治療の遅れ(doctor's delay)につながりやすい3).
今回われわれは,産褥期に発熱と腹痛を主訴に来院し,腸結核を併発した肺結核症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
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