今月の臨床 婦人科外来検診マニュアル
C.外来感染症
15.リステリア感染症
篠崎 百合子
1
1東京都立大塚病院産婦人科
pp.416-417
発行日 1994年4月10日
Published Date 1994/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901677
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リステリア症はリステリア菌(Listeria mono—cytogenes)によって起こる感染症で,家畜,野生動物,ヒトに発生する.リステリア菌は,自然界に広く分布しており,多くの哺乳動物で不育症,死産,髄膜炎などを起こす弱毒菌である.ヒトのリステリア症は,妊婦や高齢者などの免疫力の低下状態の者に生じる.本菌による感染で圧倒的に多いのは髄膜炎で,その他に肺炎,敗血症などを起こす.また妊婦では子宮内で胎児への感染が起こると死産や早産,また新生児期の重篤な感染症を引き起こすことより母児感染症として注目され欧米では多数の報告がなされている.
本邦においては1958年に山形県の小児髄膜炎,北海道の胎児敗血症性肉芽腫症からの本菌の分離が最初の報告である.1970年代より年々報告が増加しており1986年までに572例が報告されている.この572例中111例(19.4%)が周産期の症例であり,この111例のうち死亡例は40例(36%)と高い死亡率を示している1).
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