今月の臨床 周産期の感染症―管理と対策
垂直感染の管理と対策
1.B型肝炎
下屋 浩一郎
1
,
早田 憲司
1
,
村田 雄二
1
1大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学(産科学婦人科学)
pp.38-41
発行日 2004年1月10日
Published Date 2004/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100493
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ウイルス性肝炎について
妊婦のウイルス性肝炎は母児感染を生じ,感染した児はキャリア化し将来にわたり肝疾患の危険因子を抱え次世代やその家族へもウイルスを伝播する可能性があり,周産期における重要な感染症の1つである.現在,肝炎ウイルスとして同定されているものはA型,B型,C型,D型,E型,G型の6種類あり,感染ルートはA型,E型は経口感染であり,B型,C型,D型,G型は血液感染である.
ウイルス肝炎には大別すると,①急性肝炎,②劇症肝炎,③慢性肝炎,④キャリアの4つの病態がある.急性肝炎は,肝炎ウイルスに感染して肝臓に急性炎症が起こり,一部の肝細胞が急激に破壊される疾患である.A,B,C,D,E型が原因となり劇症化しない限り予後はよく,多くは6か月以内に治癒する.劇症肝炎は,わが国の定義では,肝炎のうち症状発現後8週間以内に高度の肝機能障害に基づいて肝性昏睡II度以上の脳症をきたし,プロトロンビン時間40%以下を示すものとする.そのうちには発病後10日以内に脳症が発現する急性型と,それ以降に発現する亜急性型があるとされる.慢性肝炎は,6か月以上肝臓に炎症が持続する病態とされ,血清トランスアミラーゼの異常が6か月以上続く状態である.近年では肝炎ウイルス量を測定することが可能になり,ウイルス血症が6か月以上続く状態とされる.確定診断は肝生検によりなされる.キャリアとは肝炎ウイルスが肝に6か月以上持続して潜伏する状態であり,多くは症状のないいわゆる無症候性キャリアである1).
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