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はじめに
風疹は一般的にもよく知られている先天異常の原因ウイルスである.しかし,残念ながらわが国における予防対策は非常にお粗末である.1964,65年に沖縄で風疹が大流行し,約400例の先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome : 以下CRS)患児が出生して社会的問題となった.その後の女子中学生へのワクチン接種が功を奏して,最近数年間のCRSの発生数は年間わずか数例となり,今のところは大きな問題となってはいない.
ところが1994年の予防接種法の改正によって,単味の風疹ワクチンを生後12か月以上の幼児に接種し,経過措置として1999年まで小学校1年生に,さらに,これまで行ってきた女子中学生の接種を2003年まで男子も含め行うこととなった.今年はちょうど経過措置が終了する年であるが,中学生男女への接種を止める必要があるのだろうか.接種率そのものが著しく低下している現在1),予防接種法の改正(改悪?)の影響による抗体保有者の減少が危惧されている.任意接種という原則は重要であるが,わが国では妊娠前に風疹をはじめとする感染症の抗体のチェックは一般的ではない.妊娠中の感染源となりうるわが子への予防接種に関しても無頓着といわざるを得ない.風疹ワクチンの副作用はほとんどないに等しく,たかが風疹といわずぜひとも接種を心がけて欲しいものである.
一方,医療従事者も特に風疹に対しては過敏となっており,必要以上の抗体検査を十分な説明もないままに実施している.挙げ句に,HI抗体価がやや高かったり,風疹特異的IgM抗体が弱陽性を示しただけで妊娠は諦めたほうがよいとの説明をしてしまう.逆に,抗体陰性の妊婦に対して妊娠中の予防対策や分娩後のワクチン接種を指導している産科医は稀ではないだろうか.本特集では「垂直感染の管理と対策」がテーマとなっているが,今しばらくは妊娠中に真に風疹に罹患して問題となる症例は稀であると予想されるため,むしろ一般妊婦に対するCRSの予防対策に重点をおいて解説する.
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