今月の臨床 周産期の感染症―管理と対策
母体感染の管理と対策
5.真菌感染症の予防と対策
奥山 和彦
1
1市立札幌病院産婦人科
pp.30-33
発行日 2004年1月10日
Published Date 2004/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100491
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
真菌感染症は,日常の産婦人科診療において遭遇する腟・外陰感染症のなかで最も頻度が高い.真菌は,腟・外陰の掻痒感,帯下感を訴える婦人の腟分泌物培養などから半数近くに検出されるが,腟内の常在菌であり無症候性でも5~20%,妊婦では20~30%と高頻度に検出される.
周産期真菌症の大部分はカンジダ属によるもので(表1),妊娠時には,内分泌系・代謝系などの変化から,真菌にとって過剰増殖しやすい腟内環境が生じると考えられている.また,今日の周産期医療では,切迫流産・早産の管理,糖尿病に代表される合併症妊娠の管理,抗生物質,副腎皮質ホルモン剤,免疫抑制剤の投与を必要とするハイリスク妊娠の管理など,日和見感染が発生しやすい状況にある妊婦に接する機会も増加している.
一般に,真菌に起因する腟炎の母児への影響は少ないと考えられているが,場合によっては細菌性腟炎と同様に絨毛膜羊膜炎に進展し,PROMや早産の原因となることがある.また,稀ではあるが先天性カンジダ感染症や子宮内胎児死亡の原因となり得る(図1).
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.