連載 婦人科超音波診断アップグレード・18
骨盤内炎症性疾患の超音波所見
佐藤 賢一郎
1
,
水内 英充
2
1新日鐵室蘭総合病院産婦人科
2旭川みずうち産科婦人科
pp.1405-1414
発行日 2005年10月10日
Published Date 2005/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100422
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1 はじめに
骨盤内炎症性疾患(pelvic inflammatory disease : 以下,PIDと略)は,子宮内膜炎,子宮筋層炎,卵巣・卵管炎,卵巣・卵管膿瘍,骨盤腹膜炎,ダグラス窩膿瘍などの女性の子宮頸管より上部の内生殖器に発生する炎症性疾患の総称であり1, 2),米国では生殖年齢中に10人に1人が罹患し3),毎年100万人近くの患者が発生するとの報告4)がある.卵管炎による卵管の損傷は25~35%に女性不妊をもたらすとの報告5)があり,子宮外妊娠や慢性骨盤痛の原因にもなり得る.病原菌としては,クラミジアや淋菌などの性感染症起因菌が多いが,腟内常在菌(嫌気性菌,腸内グラム陰性桿菌,G.vaginalis, Streptococcus agalactiae, Haemophilus influenzae)も関係し,いくつかの例ではサイトメガロウイルス,M.hominis, U.urealyticumも原因となり得るとされる1).また関連疾患として,さらに腹腔内に感染が進行すると肝周囲炎を合併し,Fitz─Hugh─Curtis症候群(以下,FHCと略)が発生する場合がある.
一般的に,PIDの診断における超音波の特異度は高いが,感度については必ずしも一定の見解が得られていない.しかし,腹腔鏡によらず低侵襲に繰り返し施行可能な利点は大きいと考え,今回はPIDおよびFHCの超音波所見についても検討してみたい.
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