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1はじめに
絨毛性疾患とは栄養膜細胞の異常ないし異型増殖により発症する疾患の総称である1).従来より,絨毛性疾患の診断には超音波やMRI,CT,骨盤内血管造影(以下,PAGと略),子宮卵管造影などの画像診断とhCGの測定が用いられてきた.絨毛性疾患の診断における超音波の役割としては,(1)胞状奇胎の診断,(2)胞状奇胎娩出後の子宮腔内遺残,(3)子宮筋層浸潤の有無,部位の判定,(4)侵入奇胎および絨毛癌における子宮,子宮付属器,骨盤内病巣,さらに肝臓,腎臓,脾臓などの実質臓器への転移病巣の検出,(5)治療効果判定,病巣の経時的変化の追跡,(6)カラードプラ,パルスドプラによる腫瘍の性状,血流の状況の判定などが挙げられる2).
胞状奇胎の超音波診断については,以前は散乱した超音波によりつくられるsnow storm pattern(吹雪状パターン),snow fleck pattern(淡雪状パターン),snow flake,speckling,radiating speckle like pattern,spotted echoなどと表現される像が典型的とされていた3, 4).しかし,近年,経腟超音波が登場し解像度が飛躍的に向上した結果,線状高エコーに囲まれたecho free space像(以下,vesicle echoと略)として胞状奇胎をなす嚢胞化絨毛そのものが描出可能となった3).そして,最近は月経遅延,妊娠反応陽性(市販),不正性器出血などを主訴として比較的早期に受診し経腟超音波が行われるようになり,胞状奇胎の診断もより早期になされるようになってきたところ,従来の典型的像を認める場合は少なくなり,胞状奇胎の超音波診断は新しい局面に入ったといえよう.そこで今回は,絨毛性疾患の超音波像について,特に胞状奇胎の初期像を中心に検討してみたい.
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