今月の臨床 月経前症候群と月経痛─どう対応するか
月経前症候群
月経前症候群の診断―不定愁訴の捉え方と検査法
武者 稚枝子
1
,
太田 博明
1
1東京女子医科大学産婦人科学教室
pp.962-967
発行日 2005年7月10日
Published Date 2005/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100364
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はじめに
女性の一生は,生活環境や社会環境などの外的な変化のみならず,身体の内的な変化がきわめて著しい.思春期,性成熟期,更年期といった大きな節目だけでなく,有経婦人のホルモン環境は月経周期により時々刻々と変わっている.女性には,これら内外の変動に伴うように「不定愁訴」とよばれるいくつかの症候群1)や特有の精神疾患が存在する(表1).うつ病は最近患者数の増加が社会問題となっているが,その2/3は女性であるといわれ,しかも発症のピークは性成熟期の25~44歳と推計されている.女性に特有のうつ病性障害としては,産後うつ病に代表される妊娠関連のうつ病,閉経周辺期や閉経期関連のうつ病,そして月経に関連する月経前不快気分障害(PMDD)などがある2).
一方,月経前症候群(premenstrual tension syndrome : PMS)は精神症状を主体とし身体症状も含む不定愁訴と考えられている3).PMDDの軽症型ともいわれ,有経婦人の実に50~70%に認められるとされる.しかし,多くの女性が経験することや間欠的な症状であることが,かえって疾患としての認識を低め,受診するまで至らないケースが多いものと想定される.そのため,非常に多い疾患にもかかわらず,病態像は未だ解明されておらず,診断基準や治療法も確立していない.以上のような背景があるが,本稿ではPMSの捉え方および診断と検査について記載してみたい.
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