今月の臨床 妊産婦と薬物治療─EBM時代に対応した必須知識
Ⅱ.妊娠中の各種疾患と薬物治療
2.妊娠合併症の治療と注意点
[消化器系疾患] 急性妊娠脂肪肝
香川 秀之
1
1関東労災病院産婦人科
pp.560-561
発行日 2005年4月10日
Published Date 2005/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100271
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1 診療の概要
1940年にSheehanは,妊婦・褥婦剖検例の中で,組織学的に肝臓の炎症像,壊死像を欠き,肝細胞に小葉中心性,び慢性の著明な脂肪滴の沈着,すなわち脂肪肝の状態を認めた6症例を報告した1).これが,今日でいう急性妊娠脂肪肝(acute fatty liver of pregnancy)である.
急性妊娠脂肪肝は,初回妊娠に多く,妊娠30~40週の妊娠後期,特に妊娠末期に発症することが多い.急激な肝不全の進行に加え,DIC,腎不全の合併を認めるため,診断が遅れた場合は母児ともに死亡率が高く,予後のきわめて不良とされた疾患であるが,近年は急性妊娠脂肪肝という疾患概念が浸透し,早期に診断されるようになったことや,肝不全,DIC,腎不全などに対する管理の進歩により,予後の改善がみられている.
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