今月の臨床 安全な腹腔鏡下手術をめざして
安全性と予後に配慮した手術手技
卵巣腫瘍の腹腔鏡下手術―体内法による卵巣腫瘍の手術
奥田 喜代司
1
1大阪医科大学産婦人科
pp.269-273
発行日 2005年3月10日
Published Date 2005/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100190
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はじめに
腹腔鏡下手術の適応とされるものは卵巣腫瘍のなかでも7割を占める嚢胞性良性卵巣腫瘍(卵巣嚢腫)の症例で,境界群や悪性群が疑われる卵巣腫瘍は除外される.臨床では術前に年齢,症状,診察所見,血中マーカー値(CA 125など),画像所見(経腟超音波断層法,MRIなど)から良性卵巣嚢腫と診断された症例にのみ,腹腔鏡検査に引き続いて腹腔鏡下手術が行われる.しかし,術前に良性の卵巣嚢腫として腹腔鏡下手術された症例の0.4%(53例/13,739例 : AAGL)1)や0.65%(108例/16,601例)2)に卵巣癌が発見されている.また,腹腔内への癌細胞の漏出による予後への影響については未だ議論3~5)の的である.したがって,安全と予後に配慮した腹腔鏡下手術には術前のインフォームド・コンセントおよび腹腔内への癌細胞の散布をできるだけ少なくする手技が必要である.また,良性の嚢胞性疾患のなかでも類皮嚢胞腫は内容の腹腔内漏出により非特異的炎症が起こりやすく6),子宮内膜症性嚢胞(内膜症性嚢胞)は癒着を伴うことが多いために,これらに配慮した手技が必要とされる.
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