今月の臨床 症例から学ぶ多嚢胞卵巣
多嚢胞性卵巣と関連疾患
3. 23か月間のカウフマン療法で多嚢胞性卵巣を治癒しえなかったStAR遺伝子異常症の22歳46,XX症例
宮本 純子
1
,
久慈 直昭
2
,
長谷川 行洋
3
1慶應義塾大学医学部附属病院小児科
2慶應義塾大学医学部附属病院産婦人科
3都立清瀬小児病院内分泌代謝科
pp.67-71
発行日 2005年1月10日
Published Date 2005/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100154
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背 景
Steroidogenic acute regulatory protein(StAR)遺伝子異常症は,副腎不全および性腺機能不全を主徴とする疾患である.これらの機能不全は副腎および性腺におけるStAR依存性のステロイド合成の一次的な障害に加え,組織内へのコレステロール蓄積によるミトコンドリア障害に起因した二次的なステロイド合成能障害により発症すると考えられている1).このため胎生期からホルモン産生能を有する副腎および精巣においては早期からステロイド合成が障害され,副腎不全は生後早期に発症する.46,XY症例では胎生期よりアンドロゲン産生能が障害されるため外性器は女性型となり,また二次性徴を欠如する2).一方,46,XX症例では卵巣におけるエストロゲン産生能が比較的保たれ,乳腺の発達,月経の自然発来が認められる2~4).しかしながら,思春期以降に多発性卵巣嚢胞を形成し5, 3),その腫大により卵巣茎捻転をきたしうることが報告されている5).
卵巣茎捻転は緊急手術を要する救急疾患であること,卵巣切除術を要した際には若年女性に大きな精神的苦痛を与えうること,また特に副腎不全を合併する本疾患においては副腎クリーゼの引き金となることを合わせて考えると,卵巣嚢胞腫大の進行を阻止することはきわめて重要である.これまでに,13歳より開始したプロゲステロン治療にて卵巣嚢胞の腫大を防ぎえた症例4),11歳から出現した卵巣嚢胞の腫大を14歳から開始したカウフマン療法により縮小し得た症例6)が報告されている.
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