連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール・10
卵巣腫瘍と見誤った非閉塞性膀胱憩室の1例
小笹 宏
1
1大津赤十字病院産婦人科
pp.785-788
発行日 2006年5月10日
Published Date 2006/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100137
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症 例
患 者 : 10歳代半ば.初経11歳,月経周期35日,未経妊
主 訴 : 卵巣嚢腫疑いにて紹介され受診した.
既往歴 : ダウン症候群,VSD手術(生後4か月,1歳2か月)
現病歴 : 最終月経は1月30日より6日間(通常通り).2月10日,数日来の軽度腹痛のため近くの小児科医を受診した.経腹エコーにて卵巣嚢腫が疑われ,2月13日,当科に紹介され受診した.
現 症 : 受診時,腹痛は消失しており,訴えは特になかった.外診上,腹部に腫瘤を触知せず.
経直腸エコーにて,右付属器領域に約5×6 cmの二房性,左付属器領域に直径約3 cmの単房性の嚢腫を認め,卵巣嚢腫が疑われた(図1).壁の不規則な肥厚や充実性部分など悪性を示唆する画像所見を認めず,機能性嚢腫の可能性も考え,MR検査を予約のうえ暫時フォローとした.MR検査当日(2月22日),前回心臓手術によるワイヤー遺残の可能性が判明し,MRを中止しエコーによるフォローとした.3月29日,1回目のフォロー受診時,形態変化を伴う明らかな腫瘤の増大を認めた.卵巣嚢腫の悪性転化を念頭に置き,同日,緊急施行したCT検査所見およびエコー所見を検討したが,悪性を示唆する画像所見を認めず(図2),また嚢腫内出血,浮腫,捻転に伴ううっ血,感染などほかの嚢腫増大要因は否定的であった.腫瘤増大の原因についていささか疑問が残ったものの,腫瘍性卵巣嚢腫と診断し,手術治療の方針とした.同日測定の腫瘍マーカーは,CA125 13U/ml,CA19─9 5U/ml未満,AFP 3.0 ng/ml以下と正常値であった.
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