今月の臨床 早産─予防と対策
早産児の予後と問題点
埴田 卓志
1
,
松田 直
1
,
渡辺 達也
1
,
岡村 州博
1
1東北大学病院周産母子センター
pp.780-783
発行日 2006年5月10日
Published Date 2006/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100136
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はじめに
人工肺サーファクタントや高頻度人工換気を始めとする新生児集中治療の進歩により早産児の救命率が近年著しく向上したにもかかわらず,その予後に大きな影響を与えている脳室周囲白質軟化(periventricular leukomalacia : 以下,PVL)や慢性肺疾患(chronic lung disease : 以下,CLD)に対する予防戦略はいまだ確立したとはいいがたい.むしろ,成育限界に近い早産児の救命率上昇に伴ってPVLやCLDの発症率は増加傾向にあると考えられ,こうした合併症の管理はこれからの周産期医療を展望するうえで大きな課題となっている1, 2)
一方,早産の主たる原因である絨毛膜羊膜炎(chorioamnionitis : 以下,CAM)が胎児に全身性炎症反応(fetal inflammatory response syndrome : 以下,FIRS)を引き起こし,これが出生後の早産児に合併するPVLやCLDの発症や重症化と密接に関連していることが知られている3).そのため,近年ではCAMを伴った切迫早産に対して児の予後を改善するために最適な娩出のタイミングを判断すべきであるという考え方が主流となってきている4).しかし,実際には娩出前にCAMやFIRSの進行度を正確に把握する方法が確立していないため,どのタイミングで娩出することが児の予後改善につながるのか,その判断に苦慮することも稀ではない.
本稿では,このような問題に対してわれわれの施設で実施した臨床研究のデータを呈示し,CAMやFIRSと関連する新生児期の合併症の予防について論じたい.
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