今月の臨床 妊婦と胎児の栄養管理
妊娠中の栄養代謝
妊婦の栄養代謝
江口 勝人
1
1岡山中央病院産婦人科
pp.234-237
発行日 2006年3月10日
Published Date 2006/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100043
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はじめに
280日という,比較的短期間に成長・発育を遂げる胎児を体内で養育する母体には,特有な代謝適応がみられる.つまり,胎児の発育というベクトルに向けて,各栄養素のみならずホルモン,免疫などが有機的かつ合目的な代謝相関を形成する.これらの要素のすべてが重要であることは論を俟たないが,胎児は母体のdependent parasiteであるという概念から,特に母体の栄養摂取(質と量)が基本的事項となる.
しかるに,最近妊婦を取り巻く社会環境が急激に変化してきたことは周知のとおりである.国民の健康への関心は強まる一方で,食品の国際化(輸入食品),多様化(外国料理),簡便化(インスタント食品)などが進んで社会問題化している1).また,妊婦は金目鯛の摂取を制限するように(水銀汚染から)という,先般の厚生労働省の警告などにみられるように,環境汚染による健康被害も指摘されている.
つまり,妊婦のみならず老人から小児まで幅広い層で食事のライフスタイルが変化して,加工食品利用の増加(外食産業),偏食,過食などから肥満,高血圧,高脂血症,糖尿病などの生活習慣病が増加しつつあり,重大な国民病となっている.食品添加物や防腐剤が母児の健康に及ぼす影響についても未解決のままである.狂牛病の問題も然りである.
妊婦の栄養代謝の基本は今も昔もそれほど変わっていないが,本稿ではなるべく基本的な事項について述べたい.
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