境界領域
果糖代謝から見た妊婦の肝機能に就て
渡邊 健
1
1國立霞カ浦病院産婦人科
pp.579-584
発行日 1953年10月10日
Published Date 1953/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200900
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I.緒言
妊婦では肝機能が低下しており,就中,妊娠中毒症例に甚だしいことに就ては枚擧に遑のない程多數の報告があり,その原因に就ては實質の病理解剖學的所見,機能の生理乃至生化學的變化に加うるに細菌學或は植物神經失調等の面から種々な老察が試みられているが,未だ滿足な解答が與えられていない。抑々,妊婦の肝機能に關する研究は,妊娠中毒症例に著明な肝の組織學的變化を認め,兩者間に密接な因果關係の存することを推定したDuncan (1879)の報告を嚆矢とする。次で,Hofbauer (1899)は該例には,グリコゲーンの減少,脂肪化,胆汁鬱滞等が伴うことを詳しく報告したが,他方,肝が物質代謝と重大な關係を有することが着目され,かのClauede Bern-ardがグリコゲーン發生に關する實驗的研究により,肝の糖代謝機能を明かにするに及んで,該例と肝機能,就中,糖代謝機能との關連性に就き,廣く一般の注意が換起ざれるようになつた。肝の糖代謝機能に關してはその後幾多報告があるのでこれを果糖代謝の面から總括し,妊娠時の肝機能に就て從來の文献の一端を紹介したいと思う。
果糖(第1圖)による肝機能検査法は現在最も信頼に値する方法として賞用されているが,これは次の理由に基くものである。
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