論述
幼若結合織(未分化間葉系細胞)の分化について—3H-thymidine autoradiographyによる関節軟骨の修復に関する研究
諸富 武文
1
,
榊田 喜三郎
1
,
井上 四郎
1
,
牧 陽一
1
Takefumi MOROTOMI
1
1京都府立医科大学整形外科学教室
pp.332-339
発行日 1972年5月25日
Published Date 1972/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408908476
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緒言
関節軟骨が損傷された場合,その修復は困難であり,関節機能の回復に直接的な影響をもたらすことはわれわれ整形外科医にとつて日常臨床上しばしば経験するところである.
この関節軟骨損傷の難治性に関してはすでにHippocratesの時代より知られており,ひとたび損傷された関節軟骨はそれ自体で再生,修復能をもたないというW. Hunter(1743)の記載は一般的な外科的通念として広くうけ入れられてきた.しかし軟骨の再生あるいは修復に関する研究は古来よりはなはだ多く,軟骨自体による再生,修復能の有無はもとより,軟骨周辺組織による修復機序についても幾多の説がなされ,今日まだ意見の一致をみない.周知のごとく,関節軟骨はその辺縁部を除いて血管を欠き,栄養補給路も明確でないため,損傷時の修復態度も特異な形をとることが考えられる.すなわち従来,関節軟骨の損傷裂隙部は滑膜あるいは軟骨下骨組織などの周辺組織に由来する幼若結合織によって一次的に補填,修復されることが認められているが,軟骨細胞自体の反応性増殖や再生の問題とともに,この幼若結合織のその後の運命については不明の点が多い.
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