視座
患者の知る権利
藤巻 悦夫
1
1昭和大学医学部整形外科学教室
pp.1247
発行日 1989年11月25日
Published Date 1989/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408908218
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医療技術の高度化,多様化に伴い,治療方法等についての選択の幅が広がり,医療を受ける患者側の意思や意向が選択にあたって重要になってきている.またinformed consent(十分に知らされた上での同意)等の考え方に示される患者意識の変化もあり,検査,治療等にあたって適切な情報提供を行う必要性が高まっている.この事は先に発表された「患者サービスの在り方に関する懇談会報告書」の基本的な背景の一つともなっており,国民の健康や病気に対する関心の高まり,治療法や薬等に関する情報量の増大等がみられる一方,誤った情報により混乱を招く恐れも生じており,医療機関や医療従事者は病状や治療方法等の説明をはじめとして広範な情報を正確に提供することが強く求められる.
医師が治療行為にあたって,患者に知らせ伝えるべき義務と責任を持つ内容は,1)診断の正確な内容,2)予定される治療法の性質と目的,3)その治療法の成功の可能性と,それによる患者の利益・不利益,4)ほかのふさわしい治療法の代案,5)それらの治療法が行われない場合の予後等であり,informed consentには医師と患者が対等の意識を持ち,患者が独立した個人として十分な判断力を有することが必要な条件である.実際に日本での現状は患者側も"お任せします"とふみこんだ質問を遠慮する傾向がまだ強く,また悪性腫瘍の診断内容の告知には難しい問題をかかえている.
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