視座
関節鏡視下手術の危惧と進歩
池内 宏
1
1東京逓信病院整形外科
pp.859
発行日 1986年8月25日
Published Date 1986/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408907453
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渡辺正毅,武田栄両先生による21号関節鏡の開発,つづいてselfo-scopeの開発は,関節診断学の向上に大きく貢献している.関節切開して行う手術(open surgery)に比較して,鏡視下手術後の元気な患者の顔をみると,もう少しどうにかならないか,など試行錯誤を繰返しながら行ってきた鏡視下手術が,今日のように普及することは予想もしていなかった.手術に時間を要することから種々のトラブルもあったが,周囲の諸先生方の温い応援の中で,比較的短時間に終了することができるまでになり,次の進歩を考えるときにきていると思う.またopen surgeryの経験のない医師が増加している事実もある.鏡視下手術の話が出るたびに,次のことを強調している.関節鏡でみた関節内の出来事を,鏡視下に手術することは,関節鏡の光学的特性を初め,関節鏡という器具の種々の制約下に行われる手術であり,それだけに診断についても慎重を要するものであることは,程度の差はあっても,基本的には20〜30年前と少しも変りはない筈である.また関節は非常に破格が多い上に,加齢,生活様式などによっても変化する器官である.したがって正常と病的との区別,手術適応の決定などに苦しむ場合も多々ある.患者の訴えをよく聞き,十分に診察し,X線像を読み,その上に鏡視所見を重ねてみて,正しく判断するように努力している.
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