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関節鏡視下手術は小さな切開創から関節腔に関節鏡や手術器械を挿入して直視下に手術するので,後療法が容易で早期に社会復帰できる.そのためには関節鏡,手術器械の選択と,その操作の習得が必要である.関節鏡は視野角の大きなものはそれだけ球面収差が大きく,距離,形,大きさの判断に不利なことがあり,視向角も直視鏡,30度および70度前斜視鏡など,手術の目的によって選択が必要となる.また手術内容が高度化するにつれてテレビシステムを利用して助手の協力を得ることも必要になる.手術侵襲を小さく,関節構成体の損傷を少なくするためには小さな手術器械が望ましいが,目的を十分に達することが困難なことがあり,大きすぎると術野に到達させることが困難となる.現在,多くの手術器械が市販され,その選択に戸惑う程である.
正確な診断のもとに,手術の適応,方法の決定を行い,実施に当っては術野の明視と,手術器械操作のための腔を確保しながら手術を進めることが基本である.関節腔内の紅織すべてが手術対象となるが,今回は主に滑膜,タナおよび半月板を中心として現在活躍中で好成績をあげておられる諸先生によって討論が行われた.滑膜切除術は基礎疾患によって再発は避けられないが,その対策に工夫が重ねられており,半月板についてはそれぞれが異なる器械で,挿入部位,手術操作などに工夫がこらされ,それらの成績ものべられた.鏡視下手術の現況を理解するために経験者,未経験者ともに参考になるものと思う.また,このように鏡視下手術について内容のある論文が掲載され,将来が一層楽しみである.手術成績の向上および今後の鏡視下手術の発展のために,手術経験の多い伊藤先生に敢えて診断法について依頼した.まず関節鏡診断学の習得から始めて,鏡視下手術の基本を容易にできるところから,愛護的に手術操作の習熟に進まれるよう期待したい.
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