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整形外科を育てた人達もすでに数多く書いた.最初四肢の外科の基本となった血管結紮の技術を開発したAmbroise Paréを紹介したが,それより半世紀先輩であるHans von Gerssdorffについても書きたかったが,彼の著書で有名な「Feldtbuch der Wundtartzney」を入手して読み始めたところ,古代ドイツ語で楽に読めないため今日まで発表できなかった.しかし繰返し読んでいる間に少しずつ理解できるようになった.さらにE. Gurlt著の「Geschichte der Chirurgie und ihrer Ausübung」(1898)も入手でき,この書物には「Feldtbuch der Wundtartzney」の原文を記載し少しく説明を加えているので私の理解に大いに役立った.そこで今回思い切って400年以上も昔の書物を中心としてGerssdorffを紹介することにした.
Hans von Gerssdorffは一般にはSchielhausと言われていた.彼の誕生は明らかでないが,医学史研究者で「Geschichte der Orthopädie」(1961)の著名であるProf. Bruno Valentinの推定によると,出生は1455年で死亡は1517年位と考えている,誕生地も明らかでないが,今は東ドイツ領となっているSchlesien地方であろうと推定されている,当時は外科医は内科医よりも社会的地位が低く,ー般に理髪師が外科医を兼ねていた.そのため修業も徒弟として行われていた,その間度々の戦争があり,その度に軍医として参加したと考えられる.その40年以上の経験により「Feldtbuch der Wundtartzney」ができたと思われる.ただ当時の医師はラテン語で書物を書くことが習慣的になっていたが,この書物はドイツ語である.
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