特集 頸部脊椎症(第12回脊椎外科研究会より)
座長総括/Ⅰ.基礎および検査の部
辻 陽雄
1
Haruo Tsuji
1
1富山医科薬科大学医学部整形外科学教室
pp.329-330
発行日 1984年4月25日
Published Date 1984/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408906932
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頸椎症における脊髄症状がどのような機序で発現するか,その判断,評価基準などについて基礎的臨床的研究が報ぜられた.座長は辻,黒川である(文中敬称略).
小川(回生病院)らは頸部脊髄症発症の動的因子の解明にイヌ頸髄腹側圧迫モデルを用い,前屈位,中間位での頸髄負荷応力を比較し,頸髄への応力は頸髄姿勢と密接な関係ありとの結果を得た.とくに椎間板高位での圧迫では応力は最大,かつ前屈位で更に顕著になるという.これに対し,池田(岐大)の頸椎運動下における脊髄の圧迫変形の程度と脊髄器質的変化の係り合い,また黒川(東大)の脊髄圧迫による髄内応力の時間的推移についての質疑があった.橘(北里脳外)はこのoverstretch実験はイヌと人とではanalogousとはなり難いとの意見を出した.福田(滋大)はこれまでの脊髄症発現に関する独自のデータを総括した.単なる全身血行障害のみでは脊髄症は起こらぬこと,脊髄前方圧迫率が40-50%になると,SEP異常と脊髄組織内PO2の低下をみること,これに低血圧状態を加味するとより著しい脊髄症が発生し,組織学的にも壊死を認めうること,等から,機械的脊髄圧迫と脊髄虚血は共存するとみるべしとした.これに対し,黒川(東大)は,実験的脊髄症成立は脊髄壊死出現で判定しているが,臨床的には可逆性である点からみて差異が存在するとのべ,中野(札幌)も可逆的脊髄循環障害を重視したいとの発言,また池田は軽度圧迫因子下では静脈うっ滞を考える必要ありとの発言があり,これに対し福田は密な静脈連結の理山からうっ滞は考えにくいとした.
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