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I.はじめに
腰椎分離・辷り症の腰痛および下肢痛などを主体とした病態に関する報告は数多く見られ,詳細な検討がなされているが,これら症状において馬尾神経性間歇性跛行すなわち脊柱管狭窄症状を呈するものが少なからず見出だされている.今回われわれは過去10年間に千葉大学において手術的治療を行った腰椎分離症および分離・辷り症症例をもとに,かかる間歇性跛行の発生メカニズムについて腰仙部水溶性myelogramおよびCT像,レ線学的計測などより分析を加え,この間歇性跛行が腰椎前彎の増強,仙椎の立上がりによる硬膜管の後方シフト,さらに分離部のdegenerative change(骨棘形成など)や椎体の回旋性変化および椎間板ヘルニアの合併など様々の要素が関連して発生していると考えた.特に水溶性造影剤によるミエロ像では油性のそれと異なり,硬膜管内は充分に充盈されるため,油性造影剤では不充分であった後方要素の検索が可能となり,分離し,辷っているレベルよりも1椎上位の椎弓により著明に後方より圧排されている事実をとらえることができた.したがって,一見分離・辷りにより拡大しているかに見える脊柱管内においても硬膜管そのものは後方の狭窄部位へと移動せられ,不安定性によるspondyloticな変化が加わることにより脊柱管狭窄症状を呈するものと推察され,可及的に整復を図って腰椎前彎度の減少を目指すと同時に固定を加えることが本症改善のために非常に重要であると考えられた.われわれの教室においてはかかる症例に対し腰椎前方固定術を主として施行してきたが,術前後のミエロ像の比較によっても,椎体列の矯正や移植骨による椎間腔の開大などが腰椎の前彎度を減少させ,後方圧排像の消失を見,良好な結果を生んでいることが確かめられた.以下その詳細につき報告する.
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